エデン条約編、その罪と憎悪が行き着く果て。
2022/5/24に前編、6/8に中編、8/9に後編が公開された。
- ⓪プロローグ/すべての巡礼者の幻想
- ①檻の中のお姫様
- ②滅びの緋色
- ③魔女の生誕
- ④スクワッドの過去
- ⑤敵対者(アンタゴニスト)
- ⑥罪と罰の果て
- ⑦少女たちのためのキリエ
- ⑧未来への夜明け
- ⑨エピローグ
⓪プロローグ/すべての巡礼者の幻想
サオリたちはアリウス兵に包囲された。サオリは奥の手である「ヘイローを破壊する爆弾」を用いて皆を逃がそうとするが、彼女の傷は決して浅くない。
アツコは"彼女"……「ベアトリーチェ」と交渉し、その名にかけて3人の安全を約束させる。自らの身と引き換えに……。だがベアトリーチェはアツコを確保すると、兵隊にスクワッドの始末を命じるのだった。
①檻の中のお姫様
何らかの力によって隠匿されているアリウス自治区。アリウス兵たちはカタコンベの巨大迷宮を通じて自治区の出入りを行っているようだ。
アズサは任務の度に、迷宮の出口が記された地図を手渡されていたという。地図の経路は毎回変わり、暗号化も施されていたのだとか。アリウス自治区を探り当てるのは簡単ではないだろう……。
そこでサクラコは、アリウスと内通していたミカならば自治区への通路を知っているのではないかと問う。だがナギサは、「自治区の場所だけは知らない」というミカの言葉を信じていた。信じること、それが此度の事件を経て得た教訓だ……。ナギサはどうあっても彼女を信じ、そして庇うことに決めていた。
アリウスと結託し、クーデターを企てたミカに対する非難の声は日に日に強まるばかりであった。断罪を要求する騒動は頻発し、私刑としてミカの檻に石を投げ込む生徒も現れ始めた。所持品は押収され、彼女が大事に集めていた服やアクセサリーも全て焼却された。今やミカは、トリニティの公共の敵となっていた……。
彼女は既に十分すぎるほどの代償を支払った……そう考えるナギサは、明日の聴聞会でミカの弁護を行うつもりだった。だが肝心のミカが出席を拒んでいるのだ。このままでは、彼女は退学となってしまうだろう。
先生はナギサの頼みを受け、檻の中のミカを訪ねることに。ミカは自分を庇い立てすることでナギサやセイアの立場までが悪くなることを危惧していた。
全ての罰は、受けて然るべきものだ。ミネとともに学園に戻ってきたセイアだが、彼女は未だ体調が優れず、寝たきりになっている。きっと彼女は自分のことを許していないだろう……。思い詰め、瞳を潤ませるミカ。
先生は2人の間に何か行き違いがあることを察し、ミカがちゃんと謝罪できるよう場を設けることに。
「そうしたら……私とナギサ、セイア、ミカ、みんなで明日の聴聞会に出席しよう!」
先生の無条件の善意に心を動かされ、希望を抱くミカ。
「……正直、二度目のチャンスなんてないと思ってた……でも、これが運命なら……」
「私はやっぱり、塔の中に閉じ込められたお姫様だったのかな……?」
「あ……な、何でもないよ、先生!」
②滅びの緋色
治療室を訪れた先生に対し、セイアは夢で視た「キヴォトスの終焉」について語る。
「天から巨大な塔が飛来し、虚空が緋色に染められ__」
「不吉な塔は、まるで悲鳴を上げるように鳴動し……この世界を少しずつ削り取って……そうして、世界の破片を『何か』に被せていった」
「削られた世界の破片が嵐のように吹き荒れる中で、黒い光が天から舞い降りて……世界が終焉に傾いていく……」
「そうして……キヴォトスのすべてが崩壊し__」
「塵一つ残さずに、すべてが虚無へと消えた」
セイアはゲマトリアがキヴォトスの外から何かを持ち込み、この世界に破滅をもたらさんとしているのだと推測する。
予知夢の真相を確かめるべく繰り返し夢と現実の世界を行き来したセイアは、双方の区別が曖昧になり危険な状態に陥っていた。
先生に諭されたセイアは、まずミカの問題を解決しなければと思い至る。セイアが一命を取り留めたという事実が、壊れそうなミカの心をかろうじて支えているのだ。
セイアはミカときちんと言葉を交わし、明日の聴聞会に出席することを決意。それを聞いたナギサは喜びの表情を浮かべるのだった。
先生と別れ、横になったセイアは……気付くとまたも明晰夢の中にいた。
目の前に立っているのは黒服、マエストロ、ゴルコンダ&デカルコマニー、そしてベアトリーチェ……。ゲマトリアである!
ベアトリーチェは秘匿されたアリウス自治区を支配し、憎悪によって生徒たちを統率した。黒服たちは彼女をゲマトリアに招き、技術やテクストなどを提供した。そして作り出されたのがヘイローを破壊する爆弾だ。
ベアトリーチェは「儀式」を完遂するべく、自治区への受け入れを条件としてサオリたちに先生の排除を命じたという。急いで伝えなければと焦るセイアだが、そのときベアトリーチェの瞳が彼女を捉える!
「うっ!?」彼女だけが、何故かセイアに気付いている!!ベアトリーチェが儀式によって呼び出そうとしているものに触れたセイアは、半狂乱に陥る。
セイアのもとに呼び出されたミカは、苦しげに咳き込む彼女を心配する。
「君が、アリウスに接触したことによって……先生が……スクワッドに狙われている……!」
「……!!?」
セイアは夢と現実の揺らぎの中で、アリウスの「バシリカ」を幻視する。そこには不気味な祭壇と、磔にされるアツコの姿。セイアはこの儀式がキヴォトスを終焉に導くものであることを悟り、先生にどこか遠くへ逃げるよう呼びかける。
「セイア様のご容態は……!?」
「ダメです、痙攣と血が止まらなくて……!」
「犯人は!聖園ミカですか!?あの魔女が!!あの女が何かをしたに決まっています!」
「やめなさい!今ここで争ったって……」
「人殺し!この魔女め!!」
「出てきなさい!!」
③魔女の生誕
発信元不明のメールに呼び出され、先生は寂れた町外れに赴いていた。そこに現れたサオリは……地に膝をつき、頭を垂れて先生に助けを求める。
もともとアツコは、儀式の生贄になるべくして育てられた存在だった。ベアトリーチェは告げた。彼女の運命を変えたいのならば、自らの命令に従えと。
エデン条約を強奪し、ユスティナ聖徒会の力をアリウスのものとし、トリニティとゲヘナを手中に収めることができたなら……アツコは生贄にならずに済むと。
だが、スクワッドは任務を遂行できなかった。アツコは明日の夜明けと同時に、その命を奪われてしまうだろう。ヒヨリやミサキの生死も分からない……。
サオリはヘイロー破壊爆弾の起爆装置を先生に託し、どうかアツコを助けて欲しいと懇願する。
「出てきなさい!!聖園ミカ!!」
「私のせいで……こうなっちゃったんだね……」
己が愚かであるために、スクワッドに……サオリに利用されて。大切な人たちを傷つけて。
囚われのお姫様などと、どの口が言えたものか。これではまるで、"魔女"……。どうしてこんな結末になってしまったのか。どうして__。
「……なんだ、考えてみたら簡単なことじゃん」
「アリウススクワッドの錠前サオリ……すべては……あの女が元凶なんだから」
「私の大切な人たちがこんな目に遭っているのに、錠前サオリだけ安穏と過ごしてるなんておかしくない?うん、そう。そうだよ……」
「あの女も……私が奪われた分だけ、同じように奪われなきゃ不公平でしょ。あの女の大切な人も、同じように……全部」
ミカの心は晴れやかだった。自分が何をすればいいのか、それがはっきりと分かったからだ。直後、牢屋の壁はミカの拳によって粉砕される。
先生は爆弾を没収し、起爆装置を破壊。生徒のお願いは無碍にできないとサオリの手を取り、ヒヨリを助け出すと、ミサキのもとへ急ぐ。
この世界は虚しく、そして苦痛に満ちている……そう考えるミサキは、高架橋から飛び降りようとしていた。だがサオリがそれを許さない。
彼女が自分を傷つけようとする度、サオリはそれを阻止してきた……ミサキは観念し、アツコ救出に加わることに。
カタコンベの生きた迷宮は一定周期で構造が変化する。サオリたちが知っている唯一の入口も、0時になった瞬間使えなくなってしまうのだ。
待ち受けるアリウス兵たちと戦い、カタコンベの入口を目指す一行。だが突如として放たれた銃弾が、敵兵たちを一気に吹き飛ばす。
「やっぱりここに来ると思ってたよ、大当たり!」
粉塵を纏い、サオリたちの前に現れたのは__。
「聖園、ミカ……」
「会えて嬉しい……って顔じゃなさそうだけど、どうしたの?」
ミカは不敵に、その口角を歪める。
「そんな、魔女でも見たみたいな顔しちゃって」
④スクワッドの過去
ミカはヒヨリを倒すと、ミサキを拘束して銃弾を浴びせる。彼女の強さは尋常ではない……!
スクワッドが窮地に陥ったとき、先生が遅れて合流する。スクワッドと行動を共にする先生の姿を見たミカは動揺。その隙に、一行はカタコンベ内部へと突入する。
そしてアリウス兵を蹴散らしたミカは、スクワッドがアリウスからも追われていること、アツコを助けるため先生が味方していることを知る。
「私を軽蔑するかな……それとも、ガッカリするかな……。先生にだけは、嫌われたくなかったなぁ……」
「……でもそれでもね__私は自分を止められないの」
アリウス自治区近郊の廃墟まで辿り着いたとき、疲労と負傷を押して戦ってきたサオリが熱に倒れる。先生の常備していた解熱剤をサオリに与え、一行は休憩を取ることに。そこで先生は、ヒヨリとミサキにアリウスの過去を尋ねる。
10年前にアリウスの内戦を収め、新たな生徒会長として自治区に君臨したのがマダム・ベアトリーチェであった。
そしてベアトリーチェはアリウスの生徒たちに様々な戦闘技術と「全ては虚しいもの」という真理、そしてトリニティとゲヘナへの憎しみを教え込んでいったのだ。
アリウスの生徒会長は世襲制であった。故に、本来なら次の生徒会長はアツコとなるはずだった。
気品溢れる服を纏うアツコの姿は、貧民街で暮らしていたサオリ、ヒヨリ、ミサキたちにとってあたかも「お姫様」のように感じられたという。
しかしやがてベアトリーチェが自治区を支配すると、アツコは儀式の生贄に選ばれることとなる。
サオリはベアトリーチェの命令を遵守することを条件にアツコを取り戻し、ヒヨリとミサキ、アツコとアズサを厳しく鍛え上げ__「アリウススクワッド」となったのだ。
⑤敵対者(アンタゴニスト)
回復したサオリは、かつてユスティナ聖徒会が作ったという旧校舎の地下回廊からバシリカを目指すことに。アリウスを最も糾弾した聖徒会が、なぜかアリウスのエクソダスと再建を主導していたのだ。
アリウス自治区内に侵入した一行を待ち受けていたのは、ベアトリーチェ率いる聖徒会の複製(ミメシス)であった。
エデン条約強奪にまつわるベアトリーチェの真の目的は「アツコを古聖堂に連れて行くこと」であり、「ゲヘナとトリニティの制圧」はとどのつまりアリウス生徒たちを動かすための方便に過ぎなかった。
一度ミメシスを顕現させてしまえば、後はパスを通じてベアトリーチェが彼女たちを統制できるようになるのだという。
ベアトリーチェはアリウス自治区に満ちていた憎悪や嫌悪といった負の感情を煽り立て、アリウスの金言を「全ては虚しい」という意味に歪曲し、偽りと欺瞞で子供たちを支配してきた。
大人は子供を支配し、搾取し、捕食するものであると語るベアトリーチェ。それに対し、先生は強く憤る。
「あなたは生徒を、私たちを侮辱した」
「そして教えを、学びを侮辱した」
「私は大人として、あなたを絶対に許すことはできない」
先生とベアトリーチェは決して相容れぬ対極、敵対者なのだ。
ベアトリーチェが差し向ける聖徒会と戦うスクワッドの前に、再びミカが現れる。先生の指揮のもとサオリたちはなんとか彼女を制圧するが、それでもミカが止まる様子は無かった。
ミカには帰る場所が無いのだ。学園から追放されれば、ナギサたちにも二度と会えなくなってしまう。生徒でなくなれば、先生とも、二度と……。
「わ、私は……悪党だから……人殺しだから……」
ミカは涙を溢れさせ、自分にはもはや復讐しか残されていないのだと零す。
「だから先生、私を止めないでね」
不穏な言葉とともに姿を晦ましたミカに危機感を募らせながら、スクワッドはバシリカへ急ぐ。
そして旧校舎の地下回廊に侵入した一行の前で、突如として柱が次々に倒れ始める。物理的に先生や仲間たちと分断されたサオリは、すぐさま臨戦態勢に突入する……。
闇の彼方に、魔女の瞳が輝いていた。
⑥罪と罰の果て
サオリは先生たちにアツコのもとへ急ぐよう告げ、自らはミカに応戦する。彼女の憎悪を受け止めるべく……。
ミカに敗れたサオリは、意識を失って過去の記憶を蘇らせる。
アリウス自治区で内戦が繰り広げられ、人質として敵側に送られるはずだったアツコを密かに奪取したこと。
教官に反抗したとして痛めつけられていたアズサを、自ら指導を申し出る形で救ったこと。
そして、アズサが元来トリニティとアリウスの「和解の象徴」となるべき存在であったことを……。
ミカは当初、アリウスとの和解を心から夢見てサオリと接触した。アリウス生をトリニティに転入させ、そこで幸せに生きることができたらなら、それは和解への大きな一歩になるだろう……と。
サオリはアズサをトリニティに送り出すべく準備を進めたが、ベアトリーチェは和解そのものを否定し、ミカをトリニティの情報源として巧く利用するよう告げたのだった。
そしてアズサは、ミカからトリニティの情報を得ていたことでセイア襲撃作戦に投入されることとなった。「和解の象徴」などではなく、スパイとしてトリニティに送り込まれることとなったのだ。
しかしアズサは、そこで晴れやかな青空の下へと歩み出していった。サオリは自分のもとを離れていった彼女が本当の幸福を手に入れたことで、これまで信じてきたアリウスの教えが全て過ちであったことを知った。
「もし……私が……。いい大人に、もう少し早く出会えていたら……」
「こんな私にも……他の人生があったのだろうか」
己の過去を悔い、ミカの復讐を受け入れようとするサオリ。
しかしミカは、彼女に手を下すことができなかった。全てが虚しいばかりのこの世界で、ただ救いを願って苦しむ……そんな彼女の姿に、己自身を重ねてしまったのだ。
「あなたは……私だよ、サオリ……」
「私が、あなたの結末をこんな風に決めてしまったら……。私に救いなどないと、自ら証明することになってしまう……」
涙を零し、戦意を喪失してしまうミカ。そこに先生はようやく駆け付け、ミカは自分で言うような「魔女」などではなく、人の言うことを聞かないだけの不良生徒であると諭す。
「失敗したとしても、何度でも」
「道が続いている限り、チャンスは何回だって生み出せる」
「ミカ、サオリ……一度や二度の失敗で道が閉ざされるなんて事はないんだよ」
「__この先に続く未来には、無限の可能性があるんだから」
チャンスがないというのなら、大人である先生が作ろう。生徒が未来を諦めるなんてことは、あってはならないのだ……。
ミカとサオリによる憎悪の衝突を見届けようとしていたベアトリーチェは、興を削がれたとばかりにユスティナ聖徒会の偉大なる聖女・バルバラを放つ。ミカはバルバラを引き受け、サオリたちをバシリカの至聖所へと向かわせるのだった。
⑦少女たちのためのキリエ
日の出を待たず、既に儀式は開始されていた。ロイヤルブラッドの神秘を搾取し、キヴォトスの外から到来する色彩の力を借りて……ベアトリーチェは自らをより高位の存在に昇華しようとしていたのだ。全ては、この世界の「救世主」とならんがため!
儀式を通じて力を得たベアトリーチェは、おぞましき異形へと変貌する。
ユスティナ聖徒会との終わりなき戦いを繰り広げていたミカは、今はもはや使われることもない聖歌隊室へと辿り着く。ミカは古びたオルガンと蓄音機に手を触れ、独りごちる。
「多くの人を騙し、絶望に陥れたあなたでも……最後の最後に誰かを救うことができたなら、苦痛だらけの人生もそれだけで報われる。そう、思ったのでしょう?」
「わかるよ。私とセイアちゃんもそうだもの」
「だから……アリウススクワッド。あなた達のために、祈るね」
「いつか、あなた達の苦痛が癒える事を。あなた達に、未来が……次の機会がある事を」
「だから、私は……あなた達を赦すよ」
「それは互いが公平に不幸であることよりも、もっと良い結末だろうから」
するとその時、故障していたはずの蓄音機から音楽が流れ始める。キリエ……それは慈悲を求める歌。バルバラとさらに増殖する聖徒会のミメシスを前に、ミカは毅然と立ちはだかる。
「あなた達は通れないよ。この先にあるのは、救済の戦いを繰り広げる主人公の舞台。私たちみたいな悪役には許されていないの」
「さあ、先生。あの子たちを救ってあげて」
「ここは私が食い止めるから」
Kyrie eleison__ミカは賛美歌を口ずさみながら、銃を構える。
⑧未来への夜明け
「なりません!私の領地で慈悲を語る歌を響かせるなど!」
「生徒は憎悪を軽蔑を……呪いを謳わねばなりません!お互いを騙し傷つけ合う地獄の中で、私たちに搾取される存在であるべきなのです!」
激昂したベアトリーチェは、サオリをも生贄として儀式を完遂させようとする。しかし先生とアリウススクワッドはそれを打ち破り、アツコをついに助け出すのだった。
サオリが涙ながらにアツコと抱擁を交わす傍ら、ベアトリーチェの元にはゴルコンダが現れる。ゴルコンダは先生の介入によってベアトリーチェが「物語の主人公」から「舞台装置(マクガフィン)」へと格下げされたことを告げると、彼女を回収して去っていく。
サオリはこれまで犯してきた数々の罪、その責任を負うべく先生に自らの処遇を委ねる。しかし先生は「子供たちが苦しむような世界を作った責任は大人の自分が負うもの」だとして、サオリは自分の人生そのものに責任を負うべきだと語る。
人生の責任という言葉にサオリは惑い、自分が何をしたいのか、何をやりたいのかをこれまで考えてこなかったことに気付く。自分が分からないと零すサオリに、アツコたちは彼女に抱く印象を口にする。
「サオリは、責任感が強くて……決断力があって……」
「お、教えるのが上手です……いろいろ……教えてくれる時は、怖いですけど……」
「真面目ではあるよね。計画を立てるのも上手いし、指揮するのも上手だし」
彼女らの言葉を受けて、先生は「サオリは今後、いい先生になれるかもしれないね」と呟く。
将来の夢も、自分が生きる意味も、今はまだ分からないとしても。その答えは、これから見つけていけば良いのだ。未来に続く道は、ずっと、ずっと長いのだから。
先生は絶対に答えを見つけられると保証し、彼女らに別れを告げてミカのもとに向かう。
「まだ……何も分からないけど……それでも」
「初めて……この世界にいてもいいのだと、思うことができたよ」
仲間に囲まれながら、サオリは静かに涙を流すのであった。
満身創痍のミカは、瞳を閉じて自らの運命を受け入れようとしていた。
しかしそこに先生が駆け付け、彼女を守る。問題だらけの不良生徒だとしても、危険に晒されている生徒に背を向ける先生なんてどこにもいないと豪語して……。
そして先生は「大人のカード」を取り出し、バルバラを撃破するのだった。
更にはカタコンベを通じて、シスターフッドと救護騎士団、正義実現委員会らが救援に現れる!アズサの知るカタコンベの変化パターンと、ウイが修復した古代聖徒会のカタコンベ地図とを照合し、アリウス自治区への入り口を割り出すことに成功したのだ。
ゲマトリアが「色彩」と呼ぶ存在の力によって夢の狭間に囚われていたセイアは、白昼夢の彼方でとある少女と出会い、彼女と取引を交わした。
そして予知能力を失う代わりに現実世界へと帰還し、ナギサと共に頭を下げて各勢力を呼び集めたのであった。
セイア、ナギサの顔を見たミカは表情をボロボロと崩し、「大好き」と叫ぶのだった。
そして、聴聞会が始まる……ナギサと、ミカと、セイアと、先生と。約束通り、皆が揃って。
サオリは己を振り返り、自分を知るため一時アリウススクワッドから離れることを決めた。しかしアツコに不安はなかった……それでもと抗い続けたその果てに、必ずハッピーエンドは訪れるはずだから。
⑨エピローグ
ブラックマーケットに足を踏み入れ、依頼を引き受けたサオリだったが、学校を中退しているだの指名手配中だのとあれこれ理由を付けられて報酬はゼロ。これもまた教訓かとため息をついたその時、ハルカが現れてアルの金を踏み倒したというブラックマーケット幹部を爆破していく。
これが裏世界のやり方か……とサオリが感心する傍ら、便利屋68の事務所ではアルが白眼を剥いていた。