ぽむぜろアーカイブ

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メインストーリーVol.4 カルバノグの兎編2章「We Were RABBITs!」を読みかえす!【Scenario Archive】

憧れが、社会のルールが立ちはだかったとき……それでも己の正義を信じられるか?カルバノグの兎編2章「We Were RABBITs!」を読み返そうって記事!
2023/06/07に前編、06/14に後編が公開された。

⓪プロローグ

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二年前。FOX小隊カイザーインダストリーが秘密裏に製造していた<A.N.T.O.C.H>弾道ミサイル用サーモバリック弾を瞬く間に無力化し、防衛室を含む複数関係者の不正を暴いてみせた。連邦生徒会長の指示で動きながら、しかし連邦生徒会内の暗部にさえまっすぐに切り込んでいくSRT__彼女たちの正義は、いかなる状況でも揺らがないのだ。

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だからこそ、ミヤコたちは憧れた。

そこには、過酷な状況でも決して折れない強い信念と、厳格な規律があった。

どんな悪人をも一撃で制圧できる、圧倒的な力があった。

悍ましい敵の前でも揺るがない、大胆な勇気があった。

FOX小隊はミヤコたちの夢であり、未来だった。

だからこそ、彼女たちは__SRTになったのだ。

①かつての未来

かつてカイザーPMCはサンクトゥムタワーの行政制御権を掌握するためシャーレの部室を襲撃した。事件当日の防犯カメラ映像をチェックしていたRABBIT小隊は、SRTの装備を身に付ける兵士たちがシャーレ地下から何かを持ち出していたことに気付く。
装備の固有キー値を追跡して犯人の根城に突入した一行は……そこでFOX小隊の面々と邂逅する!

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そこでミヤコは、小隊長ユキノからRABBIT小隊の解散を指示されることとなる。1年生が学園再建の責任を負う必要はない。これからはFOX小隊の支隊として活動し、困難な選択や判断はすべて我々に委ねてほしい……。ユキノの唐突な提案にミヤコは動揺を隠せない。

先生の助け舟を得てひとまずキャンプに帰還する一行であったが、そのとき連邦生徒会の緊急アラートが一帯に鳴り響く!D.U.上空に浮かぶ飛行船の巨大ディスプレイには、連邦生徒会長代行に就任した不知火カヤの姿が映し出されていた。

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革命の日

連邦生徒会内ではサンクトゥムタワーを襲撃したカイザーコーポレーション経営陣に対する処罰が論じられていた。しかしカイザー社の持つ社会的影響力が問題となり、また事件当日のリンの行動が不透明であることなどについても話題が飛び火して、議論は遅々として進まない。

もちろんリンが連邦生徒会長代行の権威を用いて「命令」すれば、このような議論の場を設けることもなく円滑に業務をこなすことができるはずだ。しかしリンは役員たちとの対話を重んじ、皆の同意のもと決定を下すべきだと考えていた。

……カヤは、そんなリンが気に入らなかったのだ。

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「キヴォトスは、超人によって指揮されるべきなのです」

カヤはリンに銃を突きつけ、「シャーレ地下から連邦生徒会長の手紙を発見した」と告げる。その内容は“有事の際には防衛室長に代行業務を一任する”というものだ。連邦生徒会長失踪直後、シャーレ地下室に出入りできたのはリンだけ……そして、この手紙を隠して得をするのもリンだけである。

リンは手紙の偽造を疑うも、連邦生徒会に彼女を支持する人間はほとんど残っていなかった。カヤはFOX小隊を動かし、自身の支持派総数が常にリンの支持派を上回るよう仕組んでいたのだ。
文化室長・保健室長などといったリンの支持勢力が復帰しようとすれば、「動けなくなる程度」に措置する。そして世論がリンの批判に傾くよう、D.U.各地で破壊工作を行う……それらがFOX小隊の任務であった。

カヤは公文書毀棄及び職権乱用の疑いでリンを緊急逮捕。さらに人材資源室長や体育室長ハイネを操ることでリンの印象を巧みに操作し、不信任決議にあたって多大な賛成票を獲得。連邦生徒会長代行の座を奪い取るのであった__。

 

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新代行に就任したカヤから、先生は「シャーレの行政手続き改善案」を提示される。それは日々業務に追われる先生の負担軽減を目的とし、「先生のあらゆる行動の責任を連邦生徒会が担う」ことを約束するというものであった。先生は何をしても、何をしなくとも許されるようになるのだ。どんな罪を犯しても、どんな問題を起こしても……決して責められることはない。

そんなカヤの甘い誘いを、先生はしかしきっぱりと辞退する。大人が責任逃れする姿を見せてしまったら、先生として生徒の模範になれないから……と。己の言動に責任を持ってこその“大人”であると、先生は信じていた。

③凍った世界

カイザー社の不祥事を揉み消したカヤは、カイザーセキュリティにD.U.の治安維持業務を移管した。犯罪阻止を目的とした厳しい取り締まりを前に、子ウサギタウンは爆発音一つない異様な静けさに包まれる。誰もが規則を守り、法によって正義が実現された社会……なのに、ミヤコたちにはその静けさが不気味に感じられてならなかった。

RABBIT小隊の保有する火器も新行政命令に違反するものであったが、ジェネラルはそれをあえて見逃すという。いずれカヤがSRTを復活させて指揮下に置けば、RABBIT小隊もカイザー社の味方となるからだ。

「命令を受け、遂行する。たとえ自分の信念とは違っていても。それが正しい社会人であり、正しい特殊部隊のあり方だ」

その言葉に、ミヤコたちは不思議と納得を覚えてしまう。それは、FOX小隊の在り様を指し示しているように思えたからだ。

 

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カイザーセキュリティの取り締まりによって、D.U.の犯罪発生率は50%以上減少した。

しかし……市民がカイザーの目を恐れて外出を控えるこの状況が、とても健全なものとはカンナには思えなかった。

カンナは先生に対し、自身がもはや「公安局長」ではないことを明かす。先の事件時に上官命令を無視したことから彼女は役職を剥奪され、懲戒停職の身となっていたのだ。だが公安局の生徒たちはカンナの処罰を軽くするべく上層部の指示に反抗しており、現在ヴァルキューレ公安局は本来の機能を果たせない状態に陥っているのだという。

 

カンナやキリノと言葉を交わしたのち、先生は再び子ウサギ公園に赴く。しかしそこにRABBIT小隊の姿はなく、綺麗に片付けられたテントの中に一通の手紙だけが残されていた。ミヤコたちはデモを終了し、FOX小隊への合流を決意したのだ。

SRT復権に好意的なカヤが連邦生徒会長代行になった以上、デモを続ける理由はもはや無い。公園でのキャンプでは、食料や寝床を確保することも、身体を洗うことさえも難しい……しかしFOX小隊に合流すれば、サキの求める規則正しい生活も、モエの求める強力な装備も、ミユの求める温かい部屋も、すべて得ることができる。

ミヤコの求める「信念」がそこに在るかは疑問だが……しかし自身のわがままに、隊員たちを付き合わせることはミヤコにはできなかった。

④超人へと到る道

その頃カヤは、連邦生徒会長代行の過酷な業務に追われていた。彼女が想像していたよりキヴォトスの治安はずっと悪く、次から次へとトラブルが舞い込んでくるのだ。その矢先に、人材資源室長がレッドウィンター工務部に襲撃されるという事件までが発生してしまう。

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人材資源室長はリンに対するデモを工務部に依頼したのだが……カヤが新代行に就任するや否や、工務部はその矛先をカヤに変えたのだ!「キヴォトスのあらゆる問題の責任は連邦生徒会長代行にある」などと理不尽極まりない理論を展開し、プリンの支給や週休5日制を求めてD.U.各地でデモを主導する工務部。そして彼女らを抑えようとした人材資源室長は体制派と見なされ、あえなく打ち倒されてしまったのである。

カヤはチェリノに工務部の回収を要求するも、クーデターに慣れ切っている彼女とはどうにも会話が噛み合わない。さらに新条例に従わない者たちによる銀行強盗が相次ぎ、犯罪率が減ったはいいものの重犯罪が増加していることが明らかになる。

人材資源室長の負傷に伴ってカヤ支持派の勢いも弱まり、連邦生徒会内ではカヤの手腕を疑問視する声が上がり始めていた。真に平和なキヴォトスの実現を目指しているというのに、なぜ誰も自身の指示に従ってくれないのか?なぜ自分は連邦生徒会長のような「超人」になれないのか?カヤは思い悩み、そして気付く。

このキヴォトスには、恐怖が足りないのだと。

 

カヤはユキノに対し、カイザー社が子ウサギ駅地下に建造していた軍用格納庫(サイロ)で<A.N.T.O.C.H>サーモバリック弾を爆破するよう命じる。圧倒的な恐怖によって反抗勢力の意思を挫き、安全装置の不備を口実に交通室の役員を追い出してD.U.地下鉄の運営権をカイザーに譲渡する。これで全てが丸く収まるはずだ……。

ジェネラルがカヤの剛腕を讃える傍ら、しかしユキノは暗い表情を浮かべていた。

⑤カルバノグの洞窟

カヤからの圧力を受けてエンジェル24は品薄状態。お腹を空かせる先生のもとに、FOX小隊の3人__ニコオトギクルミがお弁当を持って現れる。

毒の混入などをまるで疑うことなく箸を運ぶ先生をニコたちは窘めるが、先生は「明日の大人になる子供たちを信じ、導くのが自身の役割である」と断言する。ニコはそんな先生に何かを期待し、ミヤコたちの居場所を教えるのだった。

彼女たちの中にも、迷いがあったのだ。SRT復活のためとはいえ、市民に危害を加えてしまうのは……はたして「正しい」行いといえるのだろうか、と……。

 

D.U.郊外の軍事訓練場で、夜間警備任務に就いていたミヤコは先生と出会う。

責任を負うということは、嫌なことを引き受けることでも、間違った行動に対する罰でもない。自分の行動に後悔が無いよう__心の荷を解く、楽しいことであるべきだと語る先生。

「それで……ミヤコは今、楽しいの?」そんな先生の問いを受け、ミヤコは自身の本心を吐露する。辛い真実と向き合って、他人を疑わないと成長できないのだと……過去の自分を否定することになっても、大人になるためには仕方のないことなのだと……そうやって自分を納得させ、楽になろうとしていたことを。

「どうして先生は__子供に過ぎない私たちに、自分で判断しろと言うのですか?」

「そりゃあ……私は、変な大人だからね」

変な大人。ミヤコは微笑み、そして自らの“責任”を果たしに行くことを決意する。

「行ってらっしゃい。いざという時は、責任を取るから」

「……はい!」

先生に送り出されたミヤコは、ユキノより告げられた作戦内容に真っ向から異を唱える。人々の恐怖の上に建てられた学園がどうしてSRTになれるというのか……市民の安全を脅かし、他者の権威に縋って延命するSRTに、SRTたる資格はもはや無い……と。

「私たちに命令できるのは__連邦生徒会長だけです」

ミヤコは毅然と言い放ち、ひとり訓練場を去る。

SRTという名前のためではない__ただ、変わらない価値のために戦うのだ。

 

<A.N.T.O.C.H>サーモバリック弾が起爆すれば、子ウサギタウンを含む半径5km圏内にある全てが跡形もなく崩れ去ってしまうだろう。そうなれば、FOX小隊は後戻りできなくなる。ミヤコは後輩として、進むべき道を切り拓いてくれた先輩たちの「退路」を守りたいと考えていた。

デカルトが呼び集めた所確幸のメンバー、己の信じる正義を貫かんとするカンナや“不良乗客の取り締まり”に現れた生活安全局らの助けを得ながら、ミヤコは地下サイロへの突入を果たす。
しかし先に進めば、オトギの狙撃が待ち受けている……二の足を踏むミヤコのもとに、サキモエミユの3人が駆け付ける!FOX小隊の正義に憧れ、SRTとなったのは彼女たちも同じなのだ!

ミヤコはRABBIT小隊の名の由来となった小説のタイトルを引用し、高らかに告げる。

「カルバノグの兎作戦__開始です!」

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⑥兎と狐

<A.N.T.O.C.H>サーモバリック弾の無力化にはサイロ最深部に位置するオペレーションルームの制圧が必要不可欠である。オペレーションルームへの道を切り拓くため、サキは同じポイントマンであるクルミと交戦。一瞬の動揺を誘って勝利する。
一方ミユもまた影の薄さを利用してオトギの背後に回り込み、これを撃破。中央エレベーターの制御コンソールを確保する。
そしてニコの手でオフライン化された電子ドアをモエが大量のプラスチック爆薬によってこじ開け、一行はついにサイロ最深部へと到達を果たす。

そんなRABBIT小隊に対し、ユキノは「オペレーションルームに足を踏み入れた瞬間、ミサイルの自爆ボタンを押す」と脅しをかける。作戦失敗を悟った彼女は、仲間たちを逃がしたのち一人で責任を抱え込もうとしていたのだ。

しかしユキノの意に反して、ニコたちはオペレーションルームに戻ってくる。責任から逃れるために、親友までを犠牲にしたという罪を背負いたくはない。そして、後輩たちに責任を押し付けることもしたくない。それが彼女たちの総意であった。

「この汚名は、私たちが背負って……あの子たちを帰してあげよう」

隊員たちの意志に応じ、ユキノはRABBIT小隊と戦う決意を固める。

「全ては__SRT特殊学園復活のために!」

 

__兎と狐、SRTとSRT__激しい戦いを制したのはRABBIT小隊であった。

未来に全てを賭け、自らの命さえ投げ打たんとするユキノ。そんな彼女がSRTの明日を担う後輩を見捨てるはずがないと、ミヤコは信じていた。
陰鬱な現実の埃を被ったとしても……正義が抱く、本来の価値や意味までが色褪せることは決してない。だから脅しに竦むことなく、ミヤコたちは戦うことができたのだ。

「先輩たちは私たちの夢、そして未来でした」

「未来を信じられなかったら……この道を選ぶこともなかったでしょう」

「ですから……逃げずに私たちの前を歩いてください__ユキノ先輩」

学び、支え合い、成長して__大人になったらその時に、改めて責任を負えばいい……先生の言葉にユキノは自身が「大人」ではなかったのだと悟り、敗北を認める。その表情は不思議と晴れやかであった。

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⑦エピローグ

先生が指揮するRABBIT小隊は立ちはだかるカイザーSOFを難なく蹴散らし、サンクトゥムタワーに突入。カヤを内乱および職権乱用、職務怠慢、賄賂贈与の疑いで緊急逮捕する。

カヤは言い逃れを図るも、ミヤコたちは既にFOX小隊から連邦生徒会襲撃の関与を裏付ける音声データを受け取っていた。カヤは弾劾裁判によって訴追され、FOX小隊ともども連邦矯正局に送られることとなる。彼女は最後の瞬間まで一連の行為が私利私欲によるものではなかったと主張していたようだが、その真意は闇の中だ。

 

事件から暫くして。矯正局で過ごすFOX小隊のもとに、ミヤコからの手紙と差し入れが届く。

ミヤコたちは自身らがFOX小隊を制圧し、カヤの犯罪を告発した事実を公表しないことに決めたという。彼女らに先輩の恥を広めるつもりは毛頭なかったし、連邦生徒会としても閉鎖済みであるSRTの支援を受けたという事実を正式に認められなかったからだ。

そこで一行は、事態を終息させた功績を対外的にはカンナのものとすることにした。それによってカンナと公安局の生徒は無事職務に復帰し、RABBIT小隊にもまた子ウサギ公園の正式な滞在許可が与えられることとなった。
ミヤコたちは先生を以前よりも気兼ねなく頼れるようになり、どうにかうまくやっているようだ。とはいえ生活環境が大きく変わった訳ではないので、差し入れはコンビニ弁当なのだが……。

ニコは初めてのプレゼントがコンビニ弁当だなんて、と破顔。そこにランニングから戻ってきたクルミやオトギが顔を出す。

「あれ?それって……いなり寿司じゃない?」

「うん、もらったんだ。ユキノちゃんも呼んで、みんなで食べよう」

「でも、矯正局でコンビニ弁当なんて……珍しいわね。誰からなの?」

「うーん、そうだね……誰って言えばいいんだろ……強いて言うなら……」

 

「__“明日”からのプレゼント、かな」

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